有責配偶者とは、離婚原因にあたる事実を行った配偶者、婚姻関係を破綻させた配偶者をいいます。
解説
1 有責配偶者とは
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させた、離婚の原因となる事実を行った配偶者をいいます。
具体的には、以下のような民法770条1項に定める離婚原因にあたる事実を行った配偶者をいいます。
・不貞行為(肉体関係のある浮気、不倫)
・正当な理由なく同居を拒否した上、扶養が必要な相手に生活費を渡さない
・家庭内暴力・DV
2 協議離婚・調停離婚と有責配偶者
協議離婚では、夫婦が離婚に合意する限り、離婚することができます(同法763条)。
したがって、有責配偶者であっても、相手が合意する限り、離婚することができます。
家庭裁判所での話し合いの手続きである調停離婚も、同様です。
3 裁判離婚と有責配偶者
裁判離婚では、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません(最判昭和27年2月19日)。
自ら婚姻関係を破綻させた者に離婚を認めることは、信義に反し、誠実さに欠けるからです。
①夫婦の相当長期間の別居、②未成熟子がいない、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれることがないなどの場合、有責配偶者からの離婚請求も認められることがあります(最判昭和62年9月2日)。
4 夫婦双方に有責性が認められる場合
夫婦双方が有責配偶者である場合、有責性の小さい配偶者からの離婚請求を認めた判例があります(最判昭和30年11月24日)
5 破綻後の不貞行為
夫婦関係が破綻してすでに別居している場合など、破綻後の不貞行為は、有責行為にあたらないとされています(最判昭和46年5月21日)。
関連条文
民法 770条
第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
第2項 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
民法763条
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。