証人欄に署名がないと離婚届が受理されないため、協議離婚はできません。証人を頼める人がいない場合、証人代行業者を利用する方法があります。また、調停離婚であれば証人は不要です。
1.離婚届の証人
離婚届は、協議離婚を行うために提出しなければならない書類です。離婚届には、当事者双方と成年の証人2名が署名しなければなりません(民法739条2項)。そして、これらの署名がない場合には、離婚届は受理されないこととなっています(同法765条1項)。
戸籍法の規定により、証人はそれぞれ生年月日・住所・本籍を記載して署名しなければなりません(戸籍法33条)。令和3年9月1日以降、押印義務は廃止されて任意となっています。
2.証人は誰でもいいのか
証人は、離婚する夫婦以外の方で成年であれば誰でもかまいません。令和4年4月1日以降、成人年齢が引き下げられて18歳となりました。18歳以上であれば、たとえば自分たちの子でもよいし、まったく知らない他人でも引き受けてくれるのであればかまいません。
なお、当然ながら、実在しない人物を記入したり、実在する方の名前を勝手に書いてはいけません。文書偽造罪などの犯罪となります。
3.証人による離婚意思の確認義務
離婚届に証人として署名することには、法的な意味があります。それは、「離婚の当事者が離婚意思を有していることを確認しました」ということです。
このため、証人として署名する際には、当事者に対して離婚意思が本当にあるのかどうか確認すべき義務があると考えられています。そして、この義務を怠って本人の意思を確認しないまま署名した場合、損害賠償を請求されるリスクがあります。この問題について判例は少なく、当事者の一方のみに確認すればよいのか、双方に確認すべきなのかについても判例上明確ではありませんが、双方に対する確認義務を認めた判例があるので紹介します。
<離婚届の証人に損害賠償を命じた判例:東京地裁平成21年1月14日判決>
夫が妻の署名を偽造して離婚届を作成・提出しました。その際、夫の知人であるYは、夫に頼まれて証人として署名しました。Yは夫本人に対しては離婚の意思を確認していましたが、妻に対しては直接確認しておらず、夫から離婚の話がついたと聞いただけでした。裁判所は次のように述べてYの責任を認めました(損害賠償額は6万円)。
「協議上の離婚の届出について,2名以上の成年の証人を必要としている(民法764条,739条2項)のは,離婚という重要な身分行為を行うにつき,それが当事者双方の任意の合意に基づくことを第三者(より確実を期するために2名以上とされている。)に証明させ,離婚意思の真実性と届出の正確性を担保し,離婚の効果発生について過誤のないようにしようとした趣旨に他ならない。したがって,離婚届に証人として署名・押印する者は,離婚が当事者双方の任意の合意に基づくことを確認すべき法律上の義務があるというべきであり,その確認にあたっては,原則として,当事者双方それぞれに離婚意思を確認しなければならないというべきである。」
「被告は,本件離婚届に証人として署名・押印するにあたり,原告に対しては,直接話を聞くなどして離婚意思があることを確認しなかったのであるから,被告には離婚意思確認義務の違反が認められる。」
「離婚を巡っては諸々の紛争を伴っていることが一般人において常識であり,離婚の一方当事者が相手方も離婚に同意していると話したとしても,それが往々にして虚偽である場合があることもまた一般人において常識であるから,Aの話に依拠して原告が離婚意思を有していると信じたとしても,それにより原告の離婚意思を推知し得る状況があったとは到底認め難い。」
4.証人を見つけられない場合
離婚はプライベートな事実であり、積極的に公にしたくないと考える人が多いこと、離婚届には重要な個人情報が記載されていること、証人の方も個人情報を記載しなければならないことなどから、離婚届の証人を周囲の方に頼みにくいと感じる方は多いようです。
このような事情から、証人代行サービスというものが存在しています。郵送で離婚届を送ると、証人欄を記入して返送してくれるというものです。料金や所要日数、離婚届をどこまで記入してから送るか等は業者によって異なるようです。
証人が必要な協議離婚をあきらめて、もともと証人の不要な調停離婚で離婚するのも一つの方法かと思います。
●協議離婚についてさらに詳しく知りたい方は、「協議離婚のよくあるご質問」をご覧ください。
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