養育費や財産分与など離婚に伴う問題について夫婦で話し合い、公証役場に合意した内容を伝え、公正証書の作成を依頼します。公証人が合意した内容に従い、公正証書案を作成します。公正証書案の内容を確認し、調印の日を決めます。そして、調印日当日、公証役場に当事者双方(又は代理人)が出席し、署名捺印して公正証書を完成させます。
目次
1.離婚の公正証書とは
夫婦が協議離婚をする際、離婚条件等について話し合った内容を書面にしたものを離婚協議書といいます。これは一種の契約書で、合意内容を明らかにし、証明する意味があります。
さらに、合意内容を公正証書にすることによって、次のような強力な効力を持たせることができます。
- ・高い証明力
- 公正証書は公証人が私人の依頼に基づいて作成する証書で、公文書となります。元裁判官・元検察官など専門家としてのバックグラウンドを持つ公証人が、厳格な本人確認と意思確認を経て作成するため、裁判で証拠として使われる場合の証明力が非常に高いという特徴があります。
- ・債務名義としての効力
- 一定額の金銭を支払う内容の条項があり、債務者が強制執行に服する旨の陳述が付記された公正証書には、債務名義としての効力が認められています(民事執行法22条5号)。債務名義とは債務の存在を公的に証明する文書のことで、他には判決書や調停調書などがこれに当たります。債務名義があれば、それに基づいて強制執行、すなわち預貯金や給料の差押えなどを行うことができます。自分で作った離婚協議書には債務名義としての効果はないため、差押えをするためには訴訟を提起して判決を取るなどの手間がかかります。
2.離婚の公正証書の内容
(1)離婚の公正証書の一般的な内容
離婚の公正証書には、一般的に次のような内容が含まれます。
- ①離婚合意
- ②親権者の指定
- ③養育費
- ④面会交流
- ⑤財産分与
- ⑥年金分割
- ⑦慰謝料
- ⑧清算条項
- ⑨住所変更等の通知義務
- ⑩強制執行認諾文言
①から⑦の項目のうち、必要なものについて夫婦間で合意した内容を伝え、それを公証人が整理して記載します。意見が食い違っている場合に公証人が調整や裁定を行ってくれるわけではありません。あらかじめ合意はしておく必要があります。⑧⑨⑩は、公正証書の実効性を高めるために一般的に入れるものです。
(2)離婚の公正証書に書くべきこと
公正証書に書くべきこととしては上記①から⑩のすべてですが、特にお金の問題である③⑤⑦と⑩は、該当する取決めがあるならば必ず入れるべきです。お金の約束について上述の債務名義を得られるということが、公正証書の重要な効力だからです。
(3)離婚の公正証書に書けないこと
逆に公正証書に書けないこともあります。法令違反、無効となる法律行為、行為能力制限によって取消可能となる法律行為については、いくら合意していても公正証書にしてもらうことができません(公証人法26条)。
3.離婚の公正証書作成の流れ・費用・必要書類
(1)離婚届と公正証書はどちらを先にすべきか
決まりはありませんが、公正証書を作成してから離婚届を提出するのが一般的です。特に相手方が離婚を強く望んでいるケースの場合、先に離婚が成立してしまうと、相手方が付随する問題について解決する意欲が低下し、交渉や合意が困難になることがあります。そのため、一般的には公正証書を作成する前に離婚届を提出することはお勧めしません。
(2)離婚の公正証書の作成場所
公正証書は、公証役場で作成します。公証役場は全国にあり、どの公証役場を利用するかは自由です。
(3)離婚の公正証書作成の流れ
公証役場へ問い合わせ
↓
公証人との打ち合わせ、希望する内容の伝達
↓
公証人が公正証書案を作成
↓
当事者が公正証書案を確認
↓
公正証書作成日(調印)の日時調整
↓
当事者双方(又は代理人)が公証役場に行き、調印を行い、完成
(4)離婚の公正証書の費用
公証役場の手数料は法令で一律に定められています。離婚の公正証書の場合、目的価額に応じて費用が区分されています。
目的価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超 200万円以下 | 7,000円 |
200万円超 500万円以下 | 11,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 17,000円 |
(以下略) | (以下略) |
項目ごとに手数料が計算され、その合計が請求されます。おおむね3万円~5万円程度となることが多いです。
(5)離婚の公正証書の必要書類
本人確認書類(運転免許証等)、戸籍謄本、財産分与する不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明、年金分割情報通知書等が必要になります。
(6)代理人による場合
公正証書の調印は、代理人によることも可能です。その場合、上記(4)のほか、代理人の本人確認書類、本人の実印による委任状、本人の印鑑証明が必要になります。
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