親子関係不存在確認の訴えとは、法律上の親子関係を争うための裁判手続きをいいます。
ただし、嫡出推定される子について親子関係を争う場合、親子関係不存在確認の訴えによることはできず、嫡出否認の訴えによる必要があります。
目次
1.親子関係不存在確認の訴えとは
親子関係不存在確認の訴えとは、法律上の親子関係を争うための裁判手続きをいいます。
2.親子関係不存在確認の訴えの申立権者
親子関係不存在確認の訴えは、子、子の母、子の父(戸籍上の父)のほか、子の実父など親子関係について直接身分上利害関係を有する第三者が、申し立てることができます。
3.親子関係不存在確認の訴えの期限
親子関係不存在確認の訴えに、申立の期限はありません。
4.親子関係不存在確認の訴えの手続き・流れ
親子関係不存在確認の訴えは、調停前置主義の適用があります(家事事件手続法257条、同244条、人事訴訟法2条2号)。
したがって、相手方(申立人が誰かによって相手方が異なります)の住所地を管轄する家庭裁判所に、親子関係不存在確認調停を申し立てます。
当事者で管轄の合意がある場合は、合意した家庭裁判所に申し立てることもできます。
親子関係不存在確認調停において、当事者間で、親子関係不存在の合意ができた場合、家庭裁判所が必要な調査を行った上で、その合意が正当であると認められれば、合意に従った審判がなされます。合意ができなかった場合、親子関係不存在確認訴訟を提起して、親子関係を争うことになります。
5.親子関係不存在確認の訴えと嫡出否認の訴え
妻から婚姻中に生まれた子は一律に夫の子(嫡出子)と推定されます(民法772条1項)。また、離婚後300日以内に生まれた子は、原則として、元夫の子と推定されます(民法772条2項・3項、例外的に、出生の時までに母が再婚した場合は、再婚後の夫の子と推定されます。令和6年4月1日より前の出生の場合は、出生の時までに母が再婚した場合であっても、離婚後300日以内に出生した子は元夫の子と推定されます。)。(嫡出子について、詳しくは、嫡出子の解説を参照ください)。
上記のような場合、親子関係を否定するには、嫡出の推定を覆す必要があります。そのための手続きとして、嫡出否認の訴えがあり、推定される嫡出子の父子関係を否認する場合、嫡出否認の訴えによるほかありません。
したがって、親子関係不存在で父子関係を争うことができるのは、
- 婚姻中又は離婚後300日以内に生まれた子であっても、(元)夫の長期の海外出張や別居などにより客観的に妻が(元)夫の子を妊娠する可能性がなかった時期に生まれた子
などの場合に限られます。
関連条文
民法772条(嫡出の推定)
1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
2項 前項の場合において、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
3項 第一項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。
4項 前三項の規定により父が定められた子について、第七百七十四条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中「直近の婚姻」とあるのは、「直近の婚姻(第七百七十四条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」とする。
同774条(嫡出の否認)
1項 第七百七十二条の規定により子の父が定められる場合において、父又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。
2項 前項の規定による子の否認権は、親権を行う母、親権を行う養親又は未成年後見人が、子のために行使することができる。
3項 第一項に規定する場合において、母は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
4項 第七百七十二条第三項の規定により子の父が定められる場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外のもの(以下「前夫」という。)は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
5項 前項の規定による否認権を行使し、第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに子の父と定められた者は、第一項の規定にかかわらず、子が自らの嫡出であることを否認することができない。
家事事件手続法244条
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
同257条
第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
人事訴訟法2条
この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。
1号 (略)
2号 嫡出否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに実親子関係の存否の確認の訴え
3号 (略)