一般的には、別居しながら離婚協議中・調停中の夫婦間で請求するケースが多いです。①婚姻継続中であり、②相手の方が収入が高く(子を扶養している場合は相手の方が収入が低くても認められることがあります。)、③相手が婚姻費用を支払っておらず、④請求しても権利濫用に当たらない場合に請求できます。
1.婚姻費用の意味
民法上、婚姻の効果として夫婦間の婚姻費用分担義務が定められています。
(婚姻費用の分担)
民法760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
これにより、夫婦は互いに、婚姻共同生活を営むための費用を、それぞれの資力に応じて公平に分担すべき義務を負っています。婚姻費用には、夫婦それぞれの衣食住の生活費のほか、未成熟子の監護費用、教育費などが含まれます。
2.婚姻継続中であること
婚姻費用は婚姻している状態から発生する法律効果であるため、婚姻費用の分担請求権が発生するのは婚姻継続中(内縁を含む)に限られます。
3.相手の方が収入が高いこと
婚姻費用は夫婦それぞれの資力に応じて分担するため、夫婦だけの場合、収入の高い方から低い方に請求しようとしても認められません。逆に分担を命じられることもあります。
もっとも、婚姻費用には未成熟子の監護費用、教育費なども含まれますので、子を扶養している方が婚姻費用を請求する場合は、収入の高い方から低い方に対する婚姻費用の請求も認められることがあります。
具体的な婚姻費用の金額は、通常、裁判所が公表している婚姻費用算定表により定められます。
4.相手が婚姻費用を支払っていないこと
既に算定表どおりまたはそれ以上の金額の婚姻費用を受け取っている場合、婚姻費用の請求は原則として認められません。
5.権利濫用に当たらないこと
以上を満たしていても婚姻費用の請求が認められない例外的な場合があります。それは、自らの不貞等の有責行為により別居状態を招いたなど、婚姻費用を請求することが権利濫用に当たると評価される場合です。ただ、その場合でも、子の養育費相当分については請求が認められます。
6.別居中である必要はない
前述のとおり、婚姻費用は離婚前の別居中の段階で請求することが多いですが、別居していることは要件ではありません。家庭内別居のように、同居はしているものの共同生活の実態が失われ、一方が婚姻費用を分担していないといえる状況の場合には、請求が認められます。