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嫡出推定とは

嫡出推定とは何ですか?

婚姻関係にある男女の間に生まれた子を「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます。
嫡出推定とは、夫婦が婚姻関係にある間に妻が懐胎した子は夫の子、すなわち嫡出子と推定する制度です。

1.嫡出子とは

婚姻関係にある男女の間に生まれた子供を「嫡出子」といい、そうでない子供を「嫡出でない子」または「非嫡出子」といいます。

嫡出子は生まれた瞬間から自動的に父母両方との間に法律上の親子関係が発生します。非嫡出子は母との親子関係のみが自動的に発生し、父との親子関係は認知によって発生します。

2.嫡出推定とは

(1) 嫡出推定の意味

妻から生まれた子供が常に夫の子供であるとは限りません。しかし、だからといって夫の子供だと証明しなければ嫡出子として扱われないというのではあまりにも不便です。そこで、妻が婚姻中に懐胎して生まれた子供は一律に嫡出子として扱い、疑義がある場合には夫から自分の子供ではないと否定できる制度を用意しておくという仕組みが採用されています。夫が親子関係を否定することを嫡出否認といいます。

嫡出否認をすることができるのは①夫,②夫の成年後見人,成年後見監督人,その子どものために相続権を害される者その他夫の三親等内の血族(夫が子どもの出生前又は否認の訴えを提起できる期間内に死亡したとき)だけです。妻や子は嫡出否認の調停を申し立てることができません。

また、夫は、子の出生を知った時から1年以内に、嫡出否認の調停を申し立てる必要があります。子供にとって法律上の父親が誰であるかという重要な問題を早期に確定させるためです。

まとめると、嫡出推定とは次の3点を合わせた制度です。

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は嫡出子と推定するが、夫は嫡出否認でその推定を覆すことができる
  2. 嫡出否認できるのは夫
  3. 嫡出否認できるのは子の出生を知った時から1年間

(2)嫡出推定が及ぶ範囲

嫡出推定は以上のように重大な法的効果をもたらすものです。そのため、どのような条件で嫡出推定が適用され、どのような場合には適用されないのかが重要な問題となります。

嫡出推定を定めた民法の規定は次のようになっています。

民法772条(嫡出の推定)
1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2項 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

婚姻中」とは婚姻届を提出して婚姻が成立した日から、離婚や死別などで婚姻が解消した日までの間のことです。

懐胎」は妊娠することです。出産の時期ではなく、妊娠した時期で判断されます。

しかし、妊娠した時期は、この日だと特定できないのが通常です。

そこで、民法772条2項が出産時期から懐胎時期を推定する規定を置いています。

平均的な妊娠期間は40週=280日と言われています。ただ、実際には35週=245日や42週=294日など個人差があります。

妊娠期間の個人差を広めに見積もって200日~300日ととらえ、「婚姻中の懐胎」であるケースを余すところなく含むように設定したのが「婚姻成立後200日経過後」および「婚姻解消後300日以内」という条件だといえます。

(3)嫡出推定の計算方法

具体的に「200日経過後」や「300日以内」をどのように数えればよいでしょうか。

民法には「初日不算入の原則」があるため、婚姻成立当日、婚姻解消(離婚等)の当日は1日目に数えません。それぞれ翌日を1日目として数えます。

したがって、次のようになります。

婚姻成立の日から200日経過後

婚姻成立の翌日を1日目と数えて200日目までに生まれた子供は嫡出推定が及ばない。201日目より後に生まれた子供は嫡出推定が及ぶ。

婚姻解消または取消しの日から300日以内

離婚等の翌日を1日目と数えて300日目までに生まれた子供は嫡出推定が及ぶ。301日目より後に生まれた子供は嫡出推定が及ばない。

(4)いわゆる「できちゃった婚」の場合

妊娠が発覚してから婚姻する場合、出産時期が「婚姻成立の日から200日経過後」を満たさないことも多いです。しかし、この場合は嫡出子として出生届を出すことができ、それにより嫡出子としての地位も取得できます。通常はそれで問題はないでしょう。

ただ、これは戸籍上そのような扱いが認められているというだけで、民法上は嫡出推定が及んでいないことに変わりはないため、実はトラブルの種があります。

嫡出推定が及んでいないと、親子関係を嫡出否認ではなく「親子関係不存在確認訴訟」という方法でも争うことができてしまいます。そして、子、父、母及び親子関係に関し直接身分上利害関係を有する第三者は、親子関係不存在確認訴訟を提訴することができます。提訴期間の制限はありません。

たとえば、何十年も経ってから相続問題が生じ、「あなたは〇〇の子供ではない」と親族から訴えられる可能性や、夫婦の不仲をきっかけに父親から「お前は俺の子供ではない」と訴えられる可能性もある(手続上、禁止されていない)ということになります。

もちろんDNA鑑定などで親子関係を証明できれば心配はありませんが、手続的な負担が発生する可能性はあります。このような不安定な一面があることには注意が必要です。

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