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離婚のよくあるご質問
母子家庭が受けられる手当にはどのようなものがありますか

母子家庭が受けられる手当にはどのようなものがありますか

回答

離婚により母子家庭となると、経済的に苦しくなるご家庭が多いのですが、そのような場合に利用できるのが国や地方公共団体による社会手当(一定の要件に基づいて金銭的な給付を受け取ることができる制度)です。どのようなものが利用できるのか把握し、生活の安定に役立てましょう。

まず国の制度として、ひとり親家庭を対象にした①児童扶養手当があります。「母子手当」ともよばれますが、母子にかぎらず父子家庭であっても対象となります。同じく国の制度である②児童手当は、ひとり親家庭を対象とした制度ではありませんが、ひとり親であっても問題なく受給できます。①と②は名前が似ていますが、受給資格さえ満たせば両方同時に受給できるものですから、混同することのないよう注意しましょう。③特別児童扶養手当④障害児福祉手当は、対象となるお子さんをお持ちの方には有用な支援となります。

次に、お住いの地方自治体によっては、独自にひとり親家庭の児童を対象にした社会手当を実施していることがあります。愛知県には⑤愛知県遺児手当、名古屋市には⑥ひとり親家庭手当があります。

解説

本稿では最も基本的で重要な児童扶養手当を中心に、各手当の概要を説明します。自治体によって制度が異なる部分もあるので、実際に何をいくら受け取ることができるかについては自治体の窓口でご確認ください。なお手当以外にも、医療費助成や市営住宅の提供などの形でひとり親家庭の支援を行っている自治体もあります。合わせて確認されるとよいでしょう。

1.児童扶養手当

国が児童扶養手当法に基づいて実施している制度です。窓口は、市区町村または都道府県(福祉事務所を設置していない市町村の場合)となります。

1-1.どのような人が受け取れるか

いわゆる「ひとり親家庭」の児童がこの制度の主な対象であり、その児童を養育している親が基本的な受給者ですが、実際にはいろいろな家族の形が考えられるため、要件は複雑に定められています。

まず「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者、または20歳未満で一定の障害のある者です。

児童の状況については次のいずれかの要件に該当する必要があります。

  • 父母が離婚
  • 父母の一方または両方が死亡
  • 父母の一方または両方に重度の障害
  • 父母の一方または両方が生死不明
  • 父母の一方または両方により1年以上遺棄されている
  • 父母の一方または両方がDV防止法による保護命令を受けている
  • 父母の一方または両方が2年以上拘禁されている
  • 母が未婚

そして、上記の事情により父が不在の状況で児童を監護している、母が不在の状況で児童を監護している、片親不在だが残る親が児童を監護しないか両親とも不在の場合に児童を養育する養育者のいずれかが、手当の受給者となります。

ただし、離婚のケースでは、非監護親が経済的に児童と生計を同じくしている場合は除外されます。また、再婚相手が児童を養育している場合も除外され、この再婚には事実婚状態も含まれるので注意が必要です。

また、児童が遺族年金などの公的年金を受けられる場合や、受給者が受ける年金について児童が加算対象になっている場合には、手当の全部または一部が支給されません。

さらに、児童、受給者とも日本国内に住所を有している必要があります。

1-2.手当の額

令和5年4月現在、児童扶養手当の月額は「4万4140円」で、児童2人目につき「1万0420円」、3人目以降につき「6250円」の加算があります。いずれも物価スライド方式が採用されており、物価の変動に応じて改定されます。

ただしこの金額は全部支給の場合です。所得制限により、一部支給または不支給となる場合があります。所得を計算する上では、受給者本人だけではなく生計を同じくする家族の所得が考慮されるほか、離婚した相手から養育費を受け取っている場合には、その8割が所得として換算されることに注意が必要です。

一定の医療費を支出した場合やお年寄りを扶養している方には、控除があります。

1-3.受給するには

まず上述の役所窓口で申請を行う必要があります。受給資格があることを認定してもらうための認定請求です。認定後に支給が開始し、認定前の分をさかのぼってもらうことはできません。支給は現在年6回、奇数月に2か月分ずつ振込により支払われます。

1-4.期間経過による支給の一部制限

受給開始から5年、または要件該当から7年を経過したときには、支給額の最大2分の1が減額されます。この制限の適用除外制度もあり、別途申請が必要です。

2.児童手当

2-1.どのような人が受け取れるか

中学校修了までの児童を監護し、かつ生計を同じくする父または母、その他の養育者です。

父母の両方が要件に該当する場合、同居している方が受給者となります。いずれも同居はしていない場合、児童の生計を維持する程度の高い方が受給者となります。

2-2.手当の額

児童手当の月額は、児童の年齢と人数によって決まっています。3歳未満の児童につき一律1万5000円、3歳~小学生は第一子と第二子1万円・第三子以降1万5000円、中学生は一律1万円です。

所得制限があり、受給者に一定以上の所得があれば児童手当は支給されませんが、令和4年10月支給分までは、「特例給付」の制度が存在し、中学生以下の児童1人につき一律に月額5000円を受け取ることがを受け取ることができていました。

もっとも、令和4年6月1日施行の児童手当法の一部改正に伴い、令和4年6月分(令和4年10月支給分)から所得上限限度額以上の場合、児童手当等は支給されなくなりました。

3.特別児童扶養手当・障害児福祉手当

3-1.どのような人が受け取れるか

20歳未満の精神または身体に障害を有する児童を養育する父、母、または養育者です。

「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」および同施行令が二つの手当の受給要件となる障害の程度を規定しています。それによれば、障害には一級と二級があり、いずれかに該当する20歳未満の者が「障害児」とされ、その中でも重度の障害の状態にあって日常生活において常時の介護を要する者が「重度障害児」とされます。

「障害児」については「特別児童扶養手当」が、「重度障害児」についてはそれに加えて「障害児福祉手当」も支給されるしくみとなっています。

3-2.手当の額

令和5年4月現在の児童1人あたりの月額は、「特別児童扶養手当」が一級の方には5万3700円、二級の方には3万5760円、「障害児福祉手当」が1万5220円となっています。

いずれも所得制限があります。

4.愛知県遺児手当

愛知県が実施しているひとり親家庭の児童を対象にした社会手当制度です。窓口は住所地の市区町村です。

4-1.どのような人が受け取れるか

県内に住所がある18歳以下(18歳到達の年度末日)の児童が対象で、ひとり親または両親不在の状況に関する要件や、適用除外事由はおおむね児童扶養手当の受給資格と同様です。

支給期間が5年に制限されている点が特徴的です。

4-2.手当の額

支給開始から3年間は児童1人につき月額4350円、4年目から5年目は月額2175円となっています。所得制限があります。

5.ひとり親家庭手当

名古屋市が実施しているひとり親家庭の児童を対象にした社会手当制度です。

5-1.どのような人が受け取れるか

名古屋市内に住所を有する点が要件となるほか、受給資格についてはおおむね愛知県遺児手当と共通です。

ただし、支給期間が3年であるほか、受給資格を得てから7年の経過によっても支給が終了する点が特徴です。

5-2.手当の額

児童1人につき、月額で1年目は9000円、2年目は4500円、3年目は3000円となります。所得制限により、一部支給または不支給となる場合があります。

6.おわりに

以上、主な社会手当制度の概要を説明しました。

  • 受給資格が複雑に定められている点
  • 支給額が変更されることがある点
  • お住いの自治体によっていろいろな制度がある点

を念頭に置いて、どのような手当をいくら受けることができるのか窓口で具体的に確認しましょう。また、

  • 申請手続が必要で、申請前の分をさかのぼって受給することはできない点

にも注意して、必要があれば早めに行動しましょう。

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