目次
回答
子供の姓は、両親の離婚によって影響されないので、自動的に変わることはありません。子供の姓を親に合わせて変えるためには、家庭裁判所での手続が必要になります。
解説
1.子供の姓は親の離婚に影響されない
1-1.離婚した親の姓
離婚をすると、婚姻の際に姓を変更した方の当事者は、自動的に婚姻前の姓に戻ります(民法767条1項。離婚による復氏)。いわゆる「旧姓に戻る」ということです。ただし、離婚から3か月以内に届出をすることにより、婚姻中の姓を称することもできます(同条2項。婚氏続称)。
これに対し、離婚した夫婦の間の子供については、自動的に姓が変わる仕組みはありません。自動的に親権者と同じになるということもありません。たとえば、婚姻の際に夫の姓を選択した夫婦が離婚し、母が旧姓に戻り、この母が親権を取得した場合であっても、子供の姓は父親と同じままになります。
1-2.子供と親の姓が異なることによる影響
姓が異なっているとしても、監護養育義務などの親子の法律関係には影響ありません。しかし、親子が同じ戸籍に入ることができないという影響はあります。1つの戸籍には1つの姓というルールがあるためです。そのことから、事実上の不便や心理的影響があることも考えられます。
一方、親に合わせて姓を変更することの方が子供にとって影響が大きいという考え方もあり、その理由で婚氏続称を選択する人もいます。ところが、わかりにくい点ですが、婚氏続称をしてもそれだけでは子供を同じ戸籍に入れることができません。婚氏続称は呼称上の姓を変える制度で、民法上の姓は旧姓のままであるためと説明されています。
離婚により籍を抜けた者が子供を自分の戸籍に入れるためには、いずれにしても子供の姓を変更する手続が必要だということになります。
2.子供の姓を親に合わせて変えるための手続
2-1.子の氏の変更許可申立て
民法791条1項は「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。」と定めており、この規定により子供の姓を変えることができます。期間制限はありません。
まず、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行います。手続は以下のとおりです。
①申立人:子が15歳以上であれば子本人、15歳未満であれば法定代理人です(同条3項)。
②管轄:子の住所地の家庭裁判所になります。
③必要なもの:申立書、子の戸籍謄本、親の戸籍謄本、収入印紙800円、予納郵便切手など
④手続の流れ:審判手続で審理され、場合によっては即日審判・即日交付もあります。
※①で子が15歳未満である場合、法定代理人となるのは通常は親権者です。離婚の際に親権と監護権を分離させ、監護権者に子供の姓を合わせようとする場合、この手続をするために親権者の協力が必要になり、トラブルになる可能性もあります。この問題は、親権者を協議する際に念頭に置いておきたいところです。
2-2.戸籍の届出
家庭裁判所で許可が出た後、戸籍の入籍届をすることで姓の変更の効果が発生します。届出期間の制限はありません。
①届出人:子が15歳以上であれば子本人、15歳未満であれば法定代理人です。
②届出地:入籍する者の本籍地または届出人の所在地の市区町村です。
③必要なもの:届出書、審判書謄本、戸籍謄本(住所地で届出する場合)
2-3.子の成人後の氏の変更
このような手続で姓を変更した子供は、成人に達した時から1年以内に届出をすることで、元の姓に戻ることができます(791条4項)。