当事者の合意と離婚届の提出で成立する協議離婚。日本で最も多い離婚方法です。難しそうな裁判手続きもいらないし、できるだけ協議で離婚したいと思う方も、大勢いると思います。
そこで、今回は、自分で協議離婚を目指す方に向けて、離婚協議、離婚の話し合いのすすめ方をお伝えいたします。
1. 離婚を話し合う前の準備
円滑に離婚を話し合うためには、事前の準備がとても大切です。
できるだけ、以下の準備をして、離婚の話し合いにのぞみましょう。
1-1 離婚後の生活の準備をする
離婚後の生活を準備することは、とても大切です。
離婚を切り出すことで、同居が難しくなり、すぐに別居を開始しなければならない状況に陥ることもあります。また、離婚後の生活を想定せず、準備が不十分だと、離婚後に思わぬ後悔をすることもあります。
離婚後の住居、収入や仕事の確保、子どもがいる場合は学校や養育環境を整えておきましょう。
1-2 離婚届不受理申し出をする
離婚に際しては、財産分与や子どものことなど、話し合うべきことがたくさんあります。親権以外のことであれば、離婚後に話し合っても法律上は問題ありませんが、離婚と同時にすべて決めて、すっきり別れたいという方も多いと思います。
離婚の話し合い中に、相手が離婚届を無断で提出してしまう危険性があるなどのケースでは、離婚を切り出す前に、離婚届不受理の申し出を役場にしておきましょう。
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1-3 話し合うべき事項をリストアップする
必要事項について、相手ともれなく話しをするために、話し合うべき事項をリストアップしておきましょう。
その際、大きな項目を立てた上で、細目についても項目を立てましょう。
例えば、大項目として「離婚」と立てた上で、離婚届の証人欄をどうするか、どちらが離婚届を出すか、いつ出すかなどの細目も立てておきます。
例:
大項目 |
細目 |
離婚 |
□離婚届の記入 □証人 □いつ □誰が など |
親権 |
□父母どちらにするか |
養育費 |
□金額 □支払い方法 □支払時期 など |
面会交流 |
□頻度 □面会交流方法 □連絡手段 など |
慰謝料 |
□金額 □支払い方法 □支払時期 など |
財産分与 |
□どんな財産があるか □どのように分けるか(財産ごとに) など |
年金分割 |
□分割割合 □合意の方法 など |
その他 |
□離婚後の居住関係 □社会保険手続き □親族等への報告 など |
1-4 話し合う順序を決める
先ほどリストアップした話し合うべき項目について、話し合う順序についても考えておきましょう。
例えば、親権をどちらにするか決まっていないのに、養育費について話し合うのはあまり合理的とはいえません。
離婚に必要なこと、絶対譲れないことから話すなど、順番を決めておくと、話し合いの整理にもなります。
1-5 話し合いに必要な資料をそろえる
何を話し合うかによって必要な資料も異なりますが、できるだけ資料を揃えておくと、円滑に話し合いがすすみやすいです。
例えば、離婚届、財産分与の対象財産をリストアップする、養育費の相場(養育費算定表)や年金分割のための情報通知書を取り寄せておくなどです。
話し合う項目ごとに、必要な資料を把握すると分かりやすいです。
大項目 |
資料 |
離婚 |
□離婚届 □離婚協議書の下書き |
親権 |
- |
養育費 |
□養育費算定表 □収入が分かる資料 |
面会交流 |
- |
慰謝料 |
□証拠資料 |
財産分与 |
□財産のリストアップ □各財産の価格が分かる資料 |
年金分割 |
□年金分割のための情報通知書 |
その他 |
□その他必要資料 |
1-6 離婚条件を考える
先ほどリストアップした話し合うべき項目について、自分の希望条件を考えましょう。
話し合い・交渉次第で条件を変更できるよう、条件に幅を持たせるほか、何パターンか条件を用意しておくとよいでしょう。
1-7 話し合いの場を設ける
いつ、どこで離婚を切り出すのかなど、どのような話し合いの場を設けるかは、とても重要です。
双方が、じっくり、落ち着いて話しができるタイミング、環境を設けましょう。
離婚の話し合いにお子様を同席させたくない場合は、お子様を事前に預けたり、お子様がいないタイミングを選びましょう。
1-8 弁護士に相談する
離婚を話し合うための準備として、法律の知識は欠かせません。ネットでの検索や書籍で調べる方法もありますが、無料相談などを利用して、弁護士に相談する方法もあります。
離婚を話し合うための準備は十分か、離婚条件をすべて検討できているか、相場と離れすぎていないかなど、弁護士に確認しておくとよいでしょう。
2. 離婚を話し合う
準備が整ったら、いよいよ離婚を切り出し、話し合いをします。
2-1 離婚を話し合う
どちらかが言いたいことだけ言って、相手の言うことに耳を貸さない、といった様子では、話し合いになりません。
こちらの言いたいことを伝えたら、相手の言い分も聞く、といったように、「話し合い」をしましょう。
2-2 話し合いの流れを整理する
離婚に際しては、話し合うべきことがたくさんあります。
離婚をしたいという要望に対し、相手は、離婚に応じるか、応じないか、それとも条件次第なのか。
こちらの望む離婚条件に対し、相手は、応じるか、応じないか、別の条件があるのか。
一つ一つ、話しを進めていきましょう。
3. 感情的にならずに離婚を話し合うためのポイント
離婚の話し合いは、とても感情的になりやすいです。けれど、感情的になってもいいことはあまりありません。むしろ、夫婦喧嘩になって、大声で怒鳴り合ったり、物にあたって物や家屋が壊れたり、暴力沙汰に発展して誰かが傷つく危険性もあります。
相手の言動に腹が立ったとしても、できるだけ感情的にならないよう、落ち着いて離婚の話し合いをすすめてください。
3-1 自分の利益を考える
離婚を話し合うに至った経緯や離婚原因から、相手に感情的になるのは当然ともいえます。
けれど、離婚したいという自分の希望を叶えるための話し合いであることを意識してください。
話し合いがうまくいかないと、一番損をするのは、離婚したい自分かもしれません。
相手がどのような態度を取ったとしても、自分のために、感情的になるのを抑えてください。
3-2 相手の出方を想定しておく
離婚を切り出したら、相手がどう出るのか、できるだけ悪い想定しておくのもいいでしょう。
相手の出方が想定の範囲内であれば、あるいは、想定していたより良い対応だとしたら、落ち着いて離婚の話し合いができるかもしれません。
3-3 公の場や第三者を利用する
自宅などの閉鎖的な空間では、周りの目がないため、感情的になりやすいこともあるでしょう。
落ち着いて話しをできる場所で、周りの目や第三者のいるところで話しをしてみるのも、いいでしょう。
3-4 離婚原因の追及に時間を割かない
相手が離婚に応じる意思を示している場合、なぜ離婚するに至ったか、離婚する理由や離婚する原因となった事実を追及することは、あまり得策とはいえません。
夫婦が再構築を目指すならば、なぜ離婚するに至ったか原因を話し合うことも大切かもしれません。けれど、離婚を目指すならば、それらを追及するよりも、離婚の話しを先へ先へと進めましょう。
3-5 相手を責め立てない
仮に、離婚に至った原因が相手のみにあったとしても、相手を責め立てれば、逆上・逆ギレするかもしれません。そうなると、相手の態度にこちらも冷静でいられなくなる危険性がありますし、離婚の話し合いもすすみません。
3-6 話しがそれない、余計なことを言わないようにする
離婚を話し合う夫婦は、ささいなことで、話し合いが喧嘩に発展しかねません。離婚とは関係ない、あるいは離婚をすすめる上ではあまり意味のないことで喧嘩して、離婚の話し合いがすすまなくなるのは、合理的ではありません。
離婚の話しからそれないように、余計なことは言わないようにして、離婚の話し合いをすすめましょう。
4. 離婚の話し合いが行き詰まるパターン
離婚の話し合いをした結果、協議離婚ができる場合もありますし、そうでない場合もあります。離婚の話し合いがうまくいかないパターンとしては、次のようなものがあります。
4-1 そもそも話し合いに応じない
離婚の話し合いの入口段階で、うまくいかないパターンです。
相手と連絡がつかない、相手が家を出てしまって話し合いの場がもてない、連絡しても無視されるなど、そもそも話し合いができない場合があります。
4-2 相手の言うことに一貫性がない、決断しない
離婚の話し合いはできるものの、結論まで辿りつけないパターンです。
話し合いの度に、相手の言うことがコロコロ変わってしまうと、前回の話し合いが無駄になり、結論までたどりつけません。
また、相手がどうするのか決断できず、話し合いが行き詰まる場合もあります。
4-3 感情的になって決裂
離婚の話し合いをしたものの、一方あるいは双方が、感情的になってしまい、話し合いが決裂してしまうパターンです。
4-4 相手と折り合いがつかない
離婚を話し合った結果、協議離婚できないパターンもあります。
相手が離婚に応じない場合や、親権などの離婚条件の折り合いがつかず、協議離婚できない場合です。
5. 離婚の話し合いが行き詰まったら
離婚を話し合う夫婦は、基本的には信頼関係が破綻しているわけですから、必ずしも話し合いがうまくいくとは限りません。
そんなとき、無理に離婚の話し合いを続けようとすると、かえって離婚が進まなくなることもあります。
円滑に離婚するために、自分だけですすめようとせず、第三者の手を借りることや、相手と少し距離を置いてみることも大切です。
5-1 弁護士に相談
弁護士は、離婚問題の専門家です。自分や相手の主張に法的根拠があるのか、相場と離れた過大な主張、請求、条件なのか、今後の離婚のすすめ方など、弁護士に相談してみましょう。
5-2 離婚交渉を依頼する
自分で離婚をすすめてみて行き詰まったら、弁護士に、自分の代わりに、相手と離婚を話し合うよう、離婚交渉を依頼してみるのもいいでしょう。
5-3 別居する
離婚の話し合いがすすまない場合、別居してみるのもいいでしょう。
距離ができる、時間を空けることで冷静になれることもありますし、別居は、離婚後の生活のシミュレーションにもなります。離婚後の生活を体感でき、また、法的にみても、離婚が成立しやすくなります。
5-4 離婚調停を申し立てる
協議離婚が唯一の離婚方法ではありません。協議離婚が難しければ、離婚調停を申し立てて、調停での離婚成立を目指すのもいいでしょう。
離婚調停ならば、家庭裁判所で、調停委員を交えながら、離婚を話し合うことになります。
普段とは違った場所、雰囲気で、第三者を介して話しをすることで、これまでとは違った展開になる可能性もあります。
6. まとめ
離婚の話し合い、自分で協議離婚をすすめる方法をお伝えしました。
離婚を切り出す、話し合う前の準備がとても大切であること、感情的にならず冷静に離婚話し合うことが重要であることが、お分かりいただけたかと思います。
また、十分に準備し、冷静に話し合っても、協議離婚できない場合もあるということもお分かりいただけたかと思います。
事前の準備、離婚の話し合いの最中、協議離婚が行き詰まったらなど、段階的に、継続的に弁護士に相談しながら、離婚をすすめていくことをおすすめします。