離婚届不受理申出とは、夫婦の双方又は一方の知らない間に、市区町村役場に離婚届が出された場合に、それが受理されることを未然に防止するための制度です。
解説
1 離婚届不受理申出とは
協議離婚は、夫婦の合意と離婚届の市区町村役場への提出により、成立します。
市区町村役場で離婚届を提出する際、夫婦が離婚について合意しているか確認はされません。離婚届の当事者欄への署名押印、証人2名の署名押印によって、離婚届を届け出る意思があるものとして取り扱われているためです。
このような実務上の取扱いのために、夫婦の双方又は一方の知らない間に、市区町村役場に離婚届が勝手に出されてしまうケースがあります。
このように、勝手に離婚届が出されないようにするための方法として、離婚届不受理申出という制度があります。
2 離婚届不受理申出の効果
離婚届不受理申出が出されると、その申出人(離婚届不受理申出を提出した人)を本人とする離婚事件について、申出人自らが市区町村役場に出頭して離婚届を提出したことが、市町村長によって確認できないときは、当該届出が受理されなくなります(戸籍法27条の2第4項)。
また、離婚届不受理申出が出されているにも関わらず、申出人以外の者が離婚届を出そうとして受理されなかった場合、それらの事実が申出人に通知されます(同条第5項)。
3 離婚届不受理申出の有効期限
離婚届不受理申出は、以前から戸籍の先例や通達によって認められていました。けれど、戸籍法が改正され(平成20年5月1日施行)、法制化されるに至りました。
これにより、以前は有効期限が6ヶ月とされていましたが、現在は有効期限の制限はなくなっています。
関連条文
戸籍法 27条の2
第1項 市町村長は、届出によって効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下この条において「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によってされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人(認知にあっては認知する者、民法第七百九十七条第一項に規定する縁組にあっては養親となる者及び養子となる者の法定代理人、同法第八百十一条第二項に規定する離縁にあっては養親及び養子の法定代理人となるべき者とする。次項及び第三項において同じ。)であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
第2項 (略)
第3項 何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であっても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。
第4項 市町村長は、前項の規定による申出に係る縁組等の届出があつた場合において、当該申出をした者が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができなかったときは、当該縁組等の届出を受理することができない。
第5項 市町村長は、前項の規定により縁組等の届出を受理することができなかった場合は、遅滞なく、第三項の規定による申出をした者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出があつたことを通知しなければならない。