原則として、財産分与の対象になりません。ただし例外的に、相続した後に夫婦協力したおかげで財産の減少を防げたような事情がある場合、相続財産であっても財産分与の対象になる可能性があります。
1.財産分与の対象になる財産
民法768条1項
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
上記は財産分与に関する民法の規定です。協議離婚についての規定ですが、771条によって裁判上の離婚にも準用されています。結果として、調停離婚や審判離婚も含めたすべての離婚に適用があります。
どのような財産が財産分与の対象となるかについて、民法には明確な基準が書いてありません。しかし、財産分与が離婚時における夫婦の財産の「清算」として機能すると考えられることから、夫婦の財産を次のように3つに分けた場合の①と②が財産分与の対象になると解釈されています。
①夫婦の共有財産 →財産分与の対象となる
②名義は一方の単独所有だが実質的に共有(婚姻中に夫婦が協力して得た)財産 →財産分与の対象となる
③名実ともに一方の単独所有の財産(特有財産) →財産分与の対象とならない
2.財産分与の対象にならない財産
上記③の名実ともに一方の単独所有の財産(特有財産)とは次のようなものです。
a) 夫婦のどちらかが婚姻前から持っていた財産
b) 婚姻中に、夫婦の協力とは無関係に得た財産
そして、b)の典型例が相続です。相続財産は、夫婦の協力とは無関係な身分的なつながりと被相続人の死亡という事実によって得る財産ですから、基本的には財産分与の対象になりません。
もっとも、特有財産であっても、その価値が婚姻中に減少することを夫婦の協力により回避したという事情がある場合、減少を回避できた分は夫婦協力して得た財産とみることもできるため、財産分与の対象になる可能性があります(東京高等裁判所平成7年3月13日判決、ただしこの裁判例でも結論としては財産分与の対象とは認めていません。)。
財産分与の審判において、ある財産が特有財産に当たるかどうかは、財産取得の経緯や、対価として出した財産の性質、その後の経緯など一切の事情を考慮して、夫婦が協力して得た(減少を回避した)と言えるかどうかを家庭裁判所が判断します。