非開示希望申出とは、離婚等の調停手続きにおいて、離婚調停申立書や家事調停事件の記録やそれらに記載された情報について、相手方に開示しないよう希望する旨、裁判所に申し出ることです。
解説
1 非開示希望申出とは
家事調停申立書や家事調停事件の記録(家事調停において当事者から提出された書類や裁判所が作成した書類など)には、当事者の氏名、生年月日、本籍や住所、勤務先などの個人情報が多く記載されています。
家事調停事件は、非公開手続きであり、事件に利害関係のない方は、これらの記録を閲覧(見る)・謄写(コピー)することができません。
しかし、離婚調停などの家事調停の申立書は、原則として、相手方に送付されます(家事手続法256条第1項)。
また、当事者や利害関係人は、家庭裁判所の許可を得ることにより、申立書を含めた家事調停事件の記録を閲覧・謄写ができます(同法254条第1項)。
家事調停事件の事案によっては、事件の当事者や利害関係人に対しても、住所や勤務先などを知られたくないというケースがあります。
このような場合、家事調停申立書を例外的に相手方に送付しないよう希望を申出で、また、家事調停事件の記録を閲覧・謄写させないよう希望を申し出ることができます。
このような申出のことを非開示希望申出といいます。
2 非開示希望申出の機能
家事調停では、手続きの円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、調停申立書は相手方に送付されませんし、家事調停事件の記録の閲覧・謄写には、前述のとおり、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所が、調停申立書を相手方に送付するか否か、事件記録の閲覧・謄写を許可するかどうか判断する際、当事者から非開示希望が申し出られていることを考慮します。
関連条文
家事事件手続法 第256条 (家事調停の申立書の写しの送付等)
第1項 家事調停の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき又は家事調停の手続の期日を経ないで第二百七十一条の規定により家事調停事件を終了させるときを除き、家事調停の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。ただし、家事調停の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは、家事調停の申立てがあったことを通知することをもって、家事調停の申立書の写しの送付に代えることができる。
同法 第254条 (記録の閲覧等)
第1項 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事調停事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は家事調停事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
第2項 略
第3項 家庭裁判所は、当事者又は利害関係を疎明した第三者から前二項の規定による許可の申立てがあった場合(第六項に規定する場合を除く。)において、相当と認めるときは、これを許可することができる