調停前置主義とは、協議離婚が成立しなかった場合に、離婚裁判に先立って、原則として、まず離婚に向けた調停が行われなければならない制度、主義をいいます。
解説
1 調停前置主義とは
離婚したくても、協議で離婚が成立しない場合、離婚を求める当事者は、裁判手続きによって離婚を求めていくことになります。このような場合、原則として、離婚裁判よりもまず、家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければなりません(同法257条第1項)。
このように、離婚裁判に先立って、調停を行わなければならない制度のことを、調停前置主義といいます。
日本では、協議離婚が認められており、離婚するかは当事者の意思に委ねられています。このように当事者の意思に委ねられている事項については、裁判所の判断(判決)よりも、当事者の意思による話し合いを優先させるべきとされているからです。
2 調停前置主義に反した場合
離婚調停をしないで離婚裁判を提起した場合、その訴えのあった離婚事件について、家庭裁判所が、離婚調停に付することが相当でないと認める場合を除き、職権で、離婚調停に付します(同条第2項)。
この離婚調停をしない場合には、離婚調停を申し立てたけれども、話し合いをすることなく取り下げて終了した場合も含まれます(同法273条2項、民事訴訟法262条1項)。
3 調停前置主義と離婚裁判の提起
離婚調停が不成立に終わった場合、離婚を求める者は、別途、離婚裁判を提起する必要があります。
離婚裁判は、管轄の家庭裁判所に、訴状を提出して提起します。この際、調停前置主義をみたしたことを疎明するため、訴状に、離婚調停が不成立で終了したことが記載された調書(離婚調停不成立調書)の謄本を添付する必要があります。
関連条文
家事事件手続法 257条(調停前置主義)
第1項 第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
第2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
第3項 略
同法273条 第2項
民事訴訟法第261条第3項及び第262条第1項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。(以下、略)
民事訴訟法262条1項
訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
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