除斥期間とは、権利を行使しない場合のその権利の存続期間、権利を行使しないまま一定の期間が経過すると、権利が消滅することをいいます。
解説
1 除斥期間
権利の中には、一定期間、権利を行使しないと、権利が消滅してしまうものがあります。
このような権利が消滅してしまうまでの期間、存続期間を、除斥期間といいます。
2 消滅時効との違い
除斥期間は、一定の期間で権利が消滅するという点で、消滅時効と似ています。
けれど、次の点で、除斥期間と消滅時効は異なります。
2-1 除斥期間の特徴
・期間の経過により、権利が消滅する
・期間の起算点は、権利が発生した時から
・権利が消滅した効果が遡及しない
・時効の中断(※2020年4月1日から改正民法の施行後は、完成猶予、更新)がない
2-2 消滅時効の特徴
・期間の経過と時効援用により、権利が消滅する
・起算点は、権利行使できると知った時から(※改正民法施行後は、権利が発生した時からの場合も)
・権利が消滅した効果が遡及する(初めから権利がなかったことになる)
・時効の中断(同上)がある
3 離婚と除斥期間
除斥期間の対象となる権利は、法律で定められています。
離婚に関する権利で、除斥期間にかかるものの例として、次のようなものがあります。
3-1 財産分与は2年の除斥期間
財産分与請求権には、離婚成立から2年間の除斥期間があります(民法768条2項但し書き)。
3-2 慰謝料の除斥期間は、民法改正で消滅時効にかわる
現在、不法行為による損害賠償請求権としての慰謝料請求権には、その損害及び加害者を知った時から3年間の時効期間と、その不法行為のときから20年間の除斥期間があります。
けれど、現在、民法は改正が予定されており、2020年4月1日より、改正民法が施行されています。
改正民法では、不法行為による損害賠償請求権(慰謝料請求権)の除斥期間はなくなり、消滅時効に統一されます。
具体的には、その損害及び加害者を知ったときから5年、または、その不法行為の時から20年の時効期間です。
関連条文
民法768条
第1項 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
第2項 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、の限りでない。
第3項 略
同法724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
改正民法724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2 不法行為の時から20年間行使しないとき。
改正民法724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。