離婚届を勝手に出した場合、相手に通知が送られます。また、戸籍に離婚が記載されるので、戸籍を見ればいつでも確認できます。相手に離婚意思がなかった場合、その離婚は無効です。相手はいつでも家庭裁判所に無効確認請求訴訟を提起することができ、判決が確定すれば、戸籍は訂正されます。
かりに、無効な離婚を前提として別な人と再婚している場合、重婚状態が生じ、後の婚姻は取消しの対象となります。
また、本人の意思に基づかずに人の署名・押印を使って書類を作成することは偽造に当たるので、有印私文書偽造罪などの刑事責任を問われる可能性もあります。
1.離婚届の受理通知
戸籍法により、離婚などの届出の際には本人確認が義務付けられており、届出の当事者で本人確認できていない人がいる場合には、その人に届出が受理されたことを通知することになっています(戸籍法27条の2第2項)。
離婚は当事者が二人ですから、一人が勝手に提出する場合、もう一人は本人確認ができておらず、通知が送られることになります。
2.離婚の無効
離婚には夫婦双方が離婚を合意しているという離婚意思の存在と、離婚届の提出の二つの要件がそろっている必要があります。離婚届を勝手に提出した場合、離婚意思が欠けていることになるため、その離婚は無効です。
ただし、戸籍を訂正するには家庭裁判所での離婚無効確認調停や離婚無効確認訴訟の手続が必要であり、簡単ではありません。詳しくは、よくあるご質問「離婚届の取り消し・撤回・無効」をご参照ください。
3.重婚とは
一夫一婦制に反して複数の相手と婚姻することを重婚といいます(民法732条)。通常は、婚姻届の際に重婚禁止に反していないかチェックされるので(民法740条)、重婚状態が生じることはありません。しかし、離婚した後に再婚しているケースで、離婚の取消しや無効によって前の婚姻が復活する場合には重婚状態が生じ、後の婚姻が重婚禁止に違反していることになります。
重婚禁止に違反した婚姻は、当事者、配偶者、前の配偶者、親族、検察官から取消しを請求できます(民法744条)。取消しの請求は調停または人事訴訟の手続きで行います。離婚無効確認の調停申立てと同時に申し立てることも可能とされています。
4.偽造の刑事責任
他人名義の文書を勝手に作ることを偽造といいます。離婚届は夫婦双方の名義で作るものですから、一方が勝手に作る場合、他方の名義を冒用した偽造になります。行使目的で作成した時点で有印私文書偽造罪(刑法159条・3月以上5年以下の懲役)が成立し、提出すれば偽造私文書行使罪(刑法161条)も成立します。さらに、戸籍に不実の記載をさせることにもなるので、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)も成立します。