離婚調停の申立人は、原則として調停終了までの間いつでも調停を取り下げることができます。例外は「調停に代わる審判」がなされた後で、この場合は取下げができなくなります。
取下げによるデメリットはとくにありませんが、離婚訴訟を提起したい場合には、取り下げた際の調停の状況によっては、調停前置を満たさないと判断される可能性があります。
1.調停の取下げとは
調停の取下げとは、申立人が行った調停の申立てを、申立人自身が取り下げて調停を終了させることです。
家事事件手続法273条1項 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
取下げは、調停申立ての一部についてすることもできます。一部とは、たとえば調停申立書に記載した内容のうち、慰謝料を請求する部分だけを取り下げるなどです。
調停の取下げは、後述の制限に該当する場合を除き、調停が終了していない限りいつでも可能です。調停の終了とは、調停が成立した場合、または調停委員会の判断で不成立とされた場合、調停をしない措置をされた場合などです。
取下げの理由は問われません。どんな理由でも取下げ可能です。
取下げの効果は、「最初から調停が係属していなかったものとみなす」というものです(民事訴訟法262条1項、家事事件手続法273条3項)。
もっとも、離婚訴訟の際に要求される調停前置との関係では、取り下げた調停が常になかったものとされるわけではなく、実質的な調停活動が行われていた場合には調停前置を満たしていると解され、そのように運用されています。
2.取下げの制限
離婚調停は、「調停に代わる審判」がなされた後は取り下げることができません(家事事件手続法285条1項)。
調停に代わる審判とは、調停が成立しない場合に、家庭裁判所が一切の事情を考慮して職権で事件の解決のために必要な審判をするものです(家事事件手続法284条)。
この審判を受け入れるかどうかは当事者の自由であり、受け入れない場合には2週間以内に異議を申し立てれば審判の効力を失わせることができます。
3.取下げの方法
取下げは原則として書面でする必要があり(民事訴訟法261条3項、家事事件手続法263条3項)、「取下書」を提出して行います。
取下書には調停の全部を取り下げるのか一部を取り下げるのか、一部であればどの部分を取り下げるのかを記載する必要があります。取下げの理由は記載不要です。
4.取下げ後の手続き
取下げがあったことは、相手方に通知されます(家事事件手続規則132条3項))。
取下げ後に、再度離婚調停を申し立てることは可能です。しかし、たとえば調停委員を入れ替えることを目的として取下げ後すぐに再度の申立てを行うようなことをすると、「不当な目的でみだりに調停の申立てをした」と認められて調停をしない措置(調停拒否)をされる可能性があります(家事事件手続法271条)。
取下げ後に離婚訴訟を提起した場合に調停前置が満たされていると判断されるかどうかは、前述のとおり、取り下げた調停において実質的な調停活動がなされていたかどうかによります。
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