離婚の協議ができなかった、夫婦の話し合いでは離婚ができなかったなどの場合、離婚調停を申し立て、調停離婚を目指します。
離婚調停は、家庭裁判所で、調停委員を介して離婚を話し合い、夫婦が合意した場合、離婚が成立します。
今回は、自分で離婚をすすめたい方に向けて、離婚調停の申し立て方をお伝えいたします。
目次
1.離婚調停を申し立てのおおまかな流れ
離婚調停は、家庭裁判所では「夫婦関係調整(離婚)調停」とよばれています。
離婚調停を行うよう家庭裁判所に申し出ることを、「離婚調停を申し立てる」といいます。
おおまかには、①必要な情報や書類を収集・整理した上で、②必要書類を作成し、③離婚調停を申し立てるという流れになります。
2.離婚調停に必要な書類
まずは、離婚調停の申し立てに、どのような書類が必要かを確認しましょう。
何が必要かは、離婚調停で離婚条件としてどのようなことを話し合いたいか、その離婚問題の争点等によっても異なります。
また、どこの家庭裁判所を利用するかによって、代わる場合もあります。
2-1 離婚調停申立書
離婚調停の申し立ては、必ず書面で行う必要があります(家事手続法第255条第1項)。
そこで、まずは、離婚調停申立書を作成します。
離婚調停申立書には、最低限、「当事者及び法定代理人」と「申立の趣旨及び理由」を記載します(同条第2項)。
これらの記載に不備があり、不備を補正するよう裁判所から命じられたにもかかわらず、これに従わない場合、申し立てが却下されます(同条4項)。
離婚調停申立書の写しは、原則として、相手方に送付されます(第256条第1項)。
ですから、離婚調停申立書に、何を、どう書くかは、相手がそれを読むことも意識しながら、記載する必要があります。
ただし、離婚調停申立書の写しを相手に送付することが、円滑な調停の進行を妨げるおそれがあるときは、例外的に、送付されず、申し立てがあったことが通知されるにとどまります(同項但し書き)。
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2-2 戸籍謄本(全部事項証明書)
離婚調停の添付書類として、必要です。
裁判所によっては、管轄の有無(提出先として合っているか。後述します。)を確認するため、住民票の提出も求められることもあります。
3.その他の必要書類(名古屋家庭裁判所での離婚調停)
以上のほかに、名古屋家庭裁判所において、自分で離婚調停を行う場合、次の書類等も提出するよう求められています(名古屋家庭裁判所HP参照)。
3-1 離婚調停申立書のコピー(相手方へ送付対象)
先ほど述べたとおり、相手方に送る分として、離婚調停申立書のコピーが必要です。
また、裁判所へ送付する分とは別に、ご自分の控えとして、一部、コピーを保管しておきましょう。
3-2 申立付票(開示対象)
ご夫婦のより具体的な状況を把握し、離婚調停がより円滑に行われるよう提出が必要です。
- 離婚に関連する問題で家庭裁判所の調停や審判の経験があるか
- 離婚調停で予想される争点
- お子様の監護状況、お子様の心配ごと
- ご夫婦の同居家族、ご夫婦の収入
などを記載します。
この書類は、相手方には送付されませんが、相手方から申請があれば、閲覧やコピーが許可されることもあります。
3-3 連絡先等の届出書(開示対象)
裁判所が書類送付の宛先を把握するため、提出が必要です。
この届出で、裁判所からの書類について、住所地や実家、就業場所、弁護士に代理人を依頼している場合は弁護士事務所など、送付先を指定することができます。
この書類は、相手方には送付されませんが、相手方から申請があれば、閲覧やコピーが許可されることもあります。
3-4 進行連絡メモ(非開示)
名古屋家庭裁判所にて離婚調停をすすめる上で、参考となる情報として、離婚調停を申し立てた方に、提出が求められています。
- 職業や勤務先、平日日中に連絡が取れる電話番号
- 調停期日を決めるにあたって不都合な曜日
- 調停への同伴者の予定(弁護士以外の同伴者は原則として調停室に入れません)
- 現在治療中の病気の有無
- これまでの離婚の話し合い、離婚調停を申し立てることを相手方に伝えたか
- 相手方が裁判所の呼び出しに応じると思うか
- 相手方の暴力の心配があるか
- その他、裁判所に配慮を求めることがあるか
- 相手方の情報
などを記載します。
この書類は、相手方に開示されることはありません。
4.事案によって必要な書類
4-1 年金分割のための情報通知書
離婚調停で年金分割を話し合う場合、分割の対象となる年金の情報を知るため、年金分割のための情報通知書が必要です。
4-2 収入資料
離婚調停で養育費を話し合う場合、養育費を算定するために、夫婦双方の収入に関する資料が必要です。
具体的には、給与明細、直近2年分の源泉徴収票や所得証明書、確定申告書控えなどです。
名古屋家庭裁判所では、これらのほか、家計状況説明書の提出も求められます。
4-3 財産目録
離婚調停で財産分与を話し合う場合、財産目録とそれらの財産に関する資料が必要です。
- 不動産 登記簿謄本(不動産登記事項証明書)、固定資産評価証明書
- 預貯金 通帳のコピー
- 生命保険・学資保険 保険証券
- 自動車 車検証
などが必要です。
4-4 証拠書類
離婚調停は、当事者の話し合いによる離婚成立を目指す場であるため、必ずしも証拠が必要となるわけではありません。
けれど、裁判所・調停委員や相手方に証拠を見せることによって、話し合いや調停が円滑にすすむ場合もあります。
必要に応じて提示できるよう準備しておくとよいでしょう。
4-5 非開示希望申出書
裁判所に提出する書類で、相手に知られたくない情報や相手に見せて欲しくない書類がある場合、提出します。
先ほど述べたとおり、裁判所に提出した書類は、離婚調停申立書のコピーが原則として相手方に送付されるほか、その他の書類も相手方から申請があれば、相手に内容を見せ、コピーを取ることが認められます。
けれど、相手方に住所や勤務先などの情報を知られることで、自分やお子様の生活の平穏を害されるおそれがあるなどの場合、非開示希望申出書を提出し、裁判官又は調査官の判断により、非開示としてもらえることがあります。
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5.離婚調停に必要な費用
離婚調停を行う上で、必要となる費用は、収入印紙代と郵便切手代です。
5-1 収入印紙
家庭裁判所で離婚調停を行うための手続き費用として、1,200円分の収入印紙が必要です。
離婚調停申立書に貼り付けます。
5-2 郵便切手代
家庭裁判所から申立人や相手方に書類を送付するために、郵便切手が必要です。
家庭裁判所に、郵便切手代として金銭を支払うのではなく、郵便切手を納めます。
名古屋家庭裁判所では、930円分【82円8枚、50円3枚、10円10枚、2円10枚、1円4枚】の切手が必要です。
家庭裁判所によって、離婚調停申し立ての際に必要な切手代は異なりますし、上記のように、いくらの切手が何枚必要か、細かく指定されることもあります。
管轄(申立先)の家庭裁判所に、事前に確認するようにしましょう。
なお、事件の途中で郵便切手が足りなくなった場合、家庭裁判所から、追加で郵便切手を納めるよう求められることもあります。
6.離婚調停の申立先
離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、夫婦が合意して定めた家庭裁判所に、提出します。
相手方の住んでいる市区町村に、必ずしも裁判所があるとは限りません。
また、相手方の住んでいる市区町村に裁判所があったとしても、家庭裁判所であるとは限りません。全国的に多いのは簡易裁判所ですが、簡易裁判所は家庭裁判所ではありません。
事前に、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所がどこかを確認しておきましょう。
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所がどこかは、裁判所のホームページでも確認することができます。
なお、名古屋家庭裁判所が管轄する区域は、名古屋市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、西春日井郡(豊山町)、愛知郡(東郷町)、春日井市、小牧市、瀬戸市、尾張旭市、長久手市、津島市、愛西市、弥富市、あま市、海部郡(大治町、蟹江町、飛島村)です。
7.離婚調停の申立方法
離婚調停の申し立ては、申立先の家庭裁判所の事件受付に、直接持参して提出する方法と、郵送で提出する方法があります。
名古屋家庭裁判所に離婚調停を郵送申し立てする際の提出(送付)先は、次のとおりです。
〒460-0001
愛知県名古屋市中区三の丸一丁目7番1号
名古屋家庭裁判所 家事受付センター
電話番号: 052-223-2830
8.まとめ
自分で離婚をすすめたい方に向けて、離婚調停を申し立てるための必要書類や必要な費用、申立先、申立方法をお伝えしました。
離婚調停で何を話し合いたいかによって必要書類が異なり、たくさん話し合いたいことがある場合にはそれらが多くなることが、お分かりいただけたかと思います。
また、離婚調停は、意外にも安く行うことができることも、お分かりいただけたかと思います。
離婚調停を申し立てる上で、分からないことや確認しておきたいことなどがあったら、弁護士に相談しながら、離婚調停の準備をすすめていくことをおすすめします。