現金及び預貯金などの金銭債権を財産分与する場合、税金(譲渡所得税)はかかりません。
不動産などの「資産」(所得税法33条1項)を財産分与する場合で、その資産の財産分与時の時価が、取得時より高くなっている場合、税金(譲渡所得税及び住民税)が課税されます。
なお、居住用不動産を財産分与する場合、3,000万円の特別控除など、特例があります。
目次
1.財産分与と譲渡所得税
財産分与は、所得税法上の資産の譲渡にあたるとされています。
したがって、財産分与の対象となる財産が、所得税法33条1項の「資産」にあたる場合、譲渡所得税が課税される可能性があります。
2.現金や預貯金などの財産分与と譲渡所得税
現金(金銭)及び預貯金、貸付金や売掛金などの金銭債権は、同項の「資産」にあたりません。
したがって、現金及び預貯金などの金銭債権を財産分与しても、譲渡所得税はかかりません。
3.「資産」の財産分与と譲渡所得税
不動産、自動車、株、宝石などの貴金属、骨董品などの「資産」を財産分与した場合で、譲渡所得が発生する場合、譲渡所得税及び住民税が課税されます。
譲渡所得が発生する場合とは、その「資産」の時価が、取得時より、財産分与時に高くなっている場合をいいます。
財産分与時の時価が、取得時より下がっている場合、譲渡所得税及び住民税は課税されません。
4.居住用不動産の財産分与
4-1.3,000万円の特別控除の特例
居住用不動産を財産分与する場合、一定の要件のもと、3,000万円まで譲渡所得の控除を受けることができます(租税特別措置法35条)。
4-2.居住用不動産(所有10年超)の軽減税率の特例
所有期間が10年を超える居住用不動産を財産分与する場合、一定の要件のもと、譲渡所得税の税率の軽減を受けることができます(同法31条の3)。
この特例は、4-1の3,000万円の特別控除と併用することができます。
4-3.居住用不動産の財産分与と買い換え
10年以上所有し、かつ、居住していた不動産を財産分与し、新たに居住用不動産を購入する場合、財産分与で譲渡所得が生じたときは、一定の要件のもと、譲渡所得税を将来に繰り延べることができます(同法36条の2)。
この特例は、4-1の3,000万円の特別控除の特例及び4-2の軽減税率の特例との併用ができません。有利な方を選択して適用を受けることになります。
4-4.特例の適用を受けるときの注意事項
上記3つの特例は、配偶者に対する譲渡では適用されません。財産分与の協議が離婚成立前に調ったとしても、離婚成立後(協議離婚の場合は離婚届を提出した後)に、譲渡(財産の移転)する必要があります。
4-5.特例の適用を受けるための手続き
各特例の適用を受けるためには、財産分与をした翌年の3月15日までに、必要書類を添えて確定申告書を提出する必要があります。
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