未成年の子供に対して親権を行使する者を親権者といいます。
基本的には親が親権者ですが、離婚した場合には単独親権となるため、両親のどちらか一方のみを親権者として指定しなければなりません。
目次
1.親権者とは
親であればだれでも親権者となるわけではありません。たとえば、未成年者が養子縁組をすると養親が親権者となり、実親は親権者ではなくなります(民法818条2項)。未婚で出産した女性は親権者となりますが、その子の父親は認知しない限り法律上の親ですらなく、親権者ではありません。生物学上の親>法律上の親>親権者という区別を意識するとわかりやすいかもしれません。
親権者であるということには、単に親であるということ以上の意味があるわけです。それは民法が定める「親権」の中身から考えることができます。
親権は「身上監護権」と「財産管理権」が合わさったものです。どちらも子供のために必要な権利であり、子供のために行使しなければなりません。
親権者とは、未熟な子供を守り育てる責任を負っている存在だともいえます。
2.誰が親権者になるか
(1)父母の婚姻中
次の民法の規定により、子供の両親が親権者となります。
民法818条1項 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
ここでは「父母」とのみ定められていますが、次のような他の規定との関係で、これは婚姻中に生まれた子供について、父母が婚姻している間だけ適用されることになります。
- 離婚した後は父母の一方のみが親権者となる(同法819条1項)
- 婚姻外で生まれ認知されていない子は、法律上「父」がいないため母のみが親権者となる
- 婚姻外で生まれ認知された子は、父母の一方のみが親権者となる(同条4項)
(2)婚姻中でも父母が親権者とならない例外的な場合
①父母が未成年で祖父母の親権に服している場合
親権者はその親権に服する子に代わって親権を行使することとされているため(同法833条)、父母の一方または両方が未成年の場合、その者は親権者でなく、その者の親権者(通常は祖父母)が親権者となります。
②養子の実父母の場合
実父母が子供を養子に出した場合、養子縁組中は養父母のみが親権者となります(同法818条2項)。養子縁組が解消すれば、実父母の親権が復活します。
③親権の停止、親権の喪失、親権の辞任の場合
これらの手続きが取られているときは、その者は親権者ではありません。父母の一方がこれらにより親権を行使できない場合、他方が単独で親権を行使します(同法818条3項)。
(3)父母の離婚後
離婚後について、日本の民法は単独親権制度を採用しています。離婚の際に必ずどちらか一方を親権者に指定しなければならず、しばしば親権をめぐる父母間の争いになります。指定した親権者を後で変更する場合には、裁判所での手続きが必要です。
(4)未婚の場合
未婚で生まれた子は非嫡出子といいます。非嫡出子については、母が親権者となります。父が非嫡出子を認知しても、自動的に父に親権が発生することはなく、何もしなければ母の単独親権が続きます。父母の協議で父を親権者と定めた場合のみ、父が単独親権者となります(同法819条4項)。
(5)父母がいない場合
未成年の子供に父母がいない場合、または親権喪失や親権停止等で父母のどちらも親権者でない場合、未成年後見人が選任されます(同法838条1号)。未成年後見人は親権者ではありませんが、親権者と同様の権利義務を有します(同法857条)。
児童福祉施設に入所している子供については、施設の長が親権を代行する制度があります(児童福祉法47条1項)。
3.親権に含まれる権利義務
親権の内容は、大きく身上監護権と財産管理権に分けられます。
(1)身上監護権
親権者は、子供の利益のために、子供を監護・教育する権利を有し、義務を負います(同法820条)。これを身上監護権、または監護権といいます。身上監護権にはさらに次のような具体的な権利が含まれます。
①居所指定権(同法821条)
②懲戒権(同法822条)
③職業許可権(同法823条)
もっとも、子供が自立して生活を送れるようになるまで養育する義務は、親権者でなくても親である限り負っています(そのため養育費の支払い義務があります)。
(2)財産管理権
親権者は子の財産を管理し、子の財産に関する法律行為の法定代理権を有します(同法824条)。
①財産管理
預貯金や不動産など子供名義の資産がある場合、管理・運用・処分することができます。ただし親子間で利益相反となる行為は親だけではできず、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらわなければなりません。
②法定代理権
代理人として未成年者の代わりに契約などの法律行為をし、その効果を本人に帰属させることのできる地位です。契約によらず、法律の規定によって代理権が与えられているので、法定代理権といいます。
未成年者の法定代理人は、自分が代理人として直接法律行為をすることができるほか、未成年者が行う法律行為に同意を与え、同意なしに行われた法律行為を取り消すこともできます(同意権・取消権)。これらは、判断が未熟な未成年者が不当な取引で被害を受けないよう保護するための制度です。
4.まとめ
以上をまとめると、親権者は、子供の身上監護の権利・義務を負い、子供のために財産管理をし、法定代理人となる立場の人です。
離婚の際に親権者を決める場合には、これらのことを前提に考えましょう。離婚の際に親権者にならなくても、法律上の親子関係はなくなりません。養育費の支払い義務もそこから生じます。