基礎知識 (協議離婚)
目次
1 協議離婚とは
夫婦の協議によって離婚することをいいます。
参考条文
民法763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
2 協議離婚の成立要件
夫婦が、双方とも離婚に合意し、離婚届に署名押印の上、役所に提出することによって離婚が成立します。
3 協議離婚と離婚理由・離婚原因
裁判離婚する場合、民法770条第1項に定める離婚原因(不貞行為、悪意の遺棄、三年以上の生死不明、回復見込みのない強度の精神病、婚姻を継続し難い重大な事由)が必要です。
他方、協議離婚では、夫婦が離婚に合意する限り、このような離婚理由・離婚原因は不要です。
4 協議離婚の手続きの流れ
4-1 全体の流れ
協議離婚は、一般的には、①夫婦が離婚を話し合い、②離婚に合意し(夫婦に未成年の子がいる場合は親権の合意も含みます。)、③離婚届を作成して、④提出するという流れです。
親権以外の財産分与や慰謝料、養育費や面会交流などの離婚条件は、離婚後にそれぞれ取り決めることもできます。
離婚にあたってこれらを取り決める場合、離婚協議書や公正証書が作成されることもあります。離婚協議書や公正証書を作成する場合、離婚届を提出する前(②から④の間)に、これらを作成するのが一般的です。
また、④離婚届を提出する際、夫婦が揃って役場の窓口に離婚届を持参して提出した場合以外、⑤元夫婦の双方または一方に離婚届受理の通知が送られることになります。
4-2 離婚の話し合い
離婚後の生活や弁護士への離婚相談、子どもを同席させない場合は子どもを預けるなど、十分に事前の準備をしてから、離婚の話し合いをするとよいでしょう。
また、離婚の話し合い中は、感情的にならない、夫婦喧嘩にならないよう心がけましょう。
関連コラム:自分でできる協議離婚-離婚を話し合う
4-3 離婚の合意
協議離婚には、夫婦が離婚に合意することが必要です。
冗談などの離婚意思がない場合や、感情的になってつい言ってしまったなどの一時的な離婚意思では足りません。
離婚意思は、少なくとも離婚届を作成して提出するまで、必要です。
4-4 離婚届の入手・書き方
4-4-1 離婚届の入手
離婚届は、市役所、区役所及び町村役場(各支所や出張所等の出先機関を含みます)の戸籍の窓口に備え付けてあります。
離婚届の用紙をダウンロードできるようにしている市区町村もあり、法定様式あるいは標準様式の離婚届であれば、ダウンロードした離婚届をA3サイズで印刷して使用することも可能です。ですが、印刷するサイズが違ったり、印刷が不鮮明であったり、感熱紙など消えやすい紙に印刷すると使えません。
4-4-2 離婚届の書き方
離婚届には、夫と妻それぞれの氏名、生年月日、住所、世帯主、父母の氏名のほか、本籍、離婚の種別、旧姓にもどる者の本籍、未成年の子の氏名(どちらが親権を持つかも)、同居の期間、別居前の住所、別居前の世帯の主な仕事と夫婦の職業などを記載し、夫婦それぞれが署名・押印します。
また、協議離婚には、成人2人の証人が必要であり、各人の生年月日、住所と本籍、署名押印が必要です。
離婚届へは、鉛筆や消えやすいペンでの記入は避け、インキが消えないボールペン等で記入する必要があります。
関連コラム:自分で出きる協議離婚-離婚届の書き方、離婚届と印鑑
4-5 離婚届の提出
4-5-1 離婚届の提出先
離婚届は、夫婦の本籍地か夫婦の所在地(住所地だけでなく一時的滞在地も含みます)の役場の窓口に提出します。
4-5-2 離婚届提出の必要書類
離婚届を提出する際は、離婚届書(1通)、役場の窓口に持参する場合は本人確認できる書類(マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど)、本籍地以外の役場に提出する場合は夫婦の戸籍謄本が必要です。
4-5-3 離婚届の提出方法
離婚届の届出は、届出人(夫婦双方又は一方)が役場の窓口に直接持参する方法、使者が役場の窓口に来て提出する方法、郵送による方法などによって、提出することができます。
平日夜間や土日祝日など、役所の担当窓口が閉まっている場合でも、時間外受付窓口があれば、そこに提出することもできます。
協議離婚では、当事者間で期限を定めない限り、離婚届の提出期限はありません。
離婚届が受理された日から効力が生じます。
4-6 離婚届受理の通知
離婚届を提出する際は、届出人双方(夫婦)の本人確認が必要です。しかし、夫婦の一方が持参提出する場合や、使者に依頼して提出してもらう場合、郵送で提出する場合は、届出人双方の本人確認ができません。
この場合、本人確認出来なかった届出人に対して、離婚届が受理されたことが通知されます。
5 離婚協議書
5-1 離婚協議書とは、離婚協議書の役割
離婚協議書とは、協議離婚に際して、協議の結果合意した内容を書面にしたもの、離婚の合意と離婚条件を明らかにした契約書のことをいいます。
離婚協議書には、離婚後に、協議離婚で合意した内容の食い違いなどの後日の紛争を防ぎ、また、離婚条件が守られない場合にその離婚条件を履行させる役割があります。
5-2 離婚協議書の作り方
離婚協議書は、自分で作ることもできますし、弁護士などに依頼して作成してもらうこともできます。
一般的には、離婚協議書とタイトルを付記し、夫婦が離婚に合意したことを記載した上、離婚条件ごとに項目を立てて、合意した条件を1つずつ記載します。そして、離婚協議書の作成日付を記載し、夫婦が署名押印して作成します。
離婚協議書は2通作成して、夫婦がそれぞれ1通ずつ保有します。
どこかに提出したり、離婚届に添付する必要もありません。離婚後に紛争が起きる場合に備え、大切に保管して下さい。
6 協議離婚と公正証書
6-1 公正証書とは、離婚の公正証書の役割
公正証書とは、公証人が契約などの成立を証明する公の文書のことをいいます。
離婚に際して作成する公正証書の役割は、基本的には、離婚協議書と同じです。
離婚協議書を公正証書にすると、その契約内容について離婚協議書より高い証明力を持つことになり、紛争予防の役割が強化されます。
また、財産分与や慰謝料、養育費などの金銭の支払いを離婚条件に入れた場合、「強制執行認諾文言」を公正証書の中に入れることで、それらの金銭の支払いがない場合や滞った場合に、相手の給料や預貯金などの財産を差し押さえることができるようになります。つまり、離婚条件を履行させる役割も強化されることになります。
6-2 公正証書の作り方
公正証書は、公証役場で公証人に作成してもらいます。夫婦がそれぞれ公証役場に出向いて作成することもできますし、弁護士に依頼して、代理人弁護士に公証役場に出向いてもらって作成することもできます。
公証役場に管轄はありません。お好きな公証役場・利用しやすい公証役場を選びます。
事前に公証役場に連絡し、公正証書に記載する内容・案を伝えます。
公正証書に記載する内容によって、事前に資料を求められる場合や当日の必要書類が異なりますので、それらを確認します。
公証人及び相手と、公正証書作成の日程調整をします。
なお、公正証書作成には費用がかかりますが、目的の価額によって費用が変わります。当日支払いができるよう、事前に確認しておくとよいでしょう。
7 まとめ
協議離婚は、日本で一番多く取られている離婚手続きです。
夫婦が、①離婚を話し合い、②離婚に合意し、③離婚届を作成して、④提出する。とてもシンプルな手続きですが、②離婚を合意するまでの段階で苦労するケースが多いです。
相手とうまく離婚を話し合えない、感情的になってしまう、相手に言い負かされてしまう、相手と話したくない、相手が聞く耳を持たない、遠距離で別居しているので話し合う機会がないなど、様々なケースがあります。
円満ではない、破綻している夫婦が、離婚をうまく話し合えないのは、自然なことともいえます。
離婚の話し合い、協議離婚の交渉は、弁護士に代理交渉を依頼することができます。
離婚の話し合い、協議離婚の交渉でお悩みの方は、お気軽に当事務所弁護士に、協議離婚の代理交渉をご依頼ください。
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