住宅ローンがない場合、売却代金から必要経費等控除の上、残額を財産分与の割合に応じて分配します。
住宅ローンがある場合、売買代金から必要経費等を控除、住宅ローン債務を弁済の上、残額を財産分与の割合に応じて分配します。売却代金やその他の夫婦財産では住宅ローン債務を弁済しきれない場合、財産分与として分配すべき金銭はなく、残債務の支払いが続くことになります。
目次
1.自宅の査定と住宅ローン残高の確認
自宅を売却して財産分与するにあたって、まず、自宅不動産の価値及び住宅ローン残高(住宅ローンがある場合)を把握する必要があります。
詳しくは、「自宅マンション・持ち家の財産分与①大まかな流れ、方法は?」をご参照ください。
2.自宅を売却する
次に、自宅を売却します。知人や親せきなどに個人的に売却するか、そうでなければ不動産業者に仲介を依頼し、売却をすすめましょう。
住宅ローンがある場合、事前に債権者(住宅ローン会社・金融機関)と連絡を取り合い、売却の同意を得ます。住宅ローンの繰り上げ返済や抵当権抹消等で、住宅ローン会社の協力が必要だからです。
3.売買代金から必要経費等を控除、住宅ローン債務を弁済
自宅を売却、売却代金を受け取ったら、売却代金から必要経費を支払います。必要経費は、例えば、仲介手数料、抵当権等抹消費用、所有権移転登記手続き費用、税金(印紙税、所得税・住民税、譲渡所得税ほか)などです。
また、住宅ローンがある場合、住宅ローン債務を弁済します。
4.売却代金の分配
残った売却代金について、財産分与の割合(他の財産がある場合、他の財産とともに)に応じて分配します。
!住宅を購入する際、購入代金の一部に、婚姻前の預貯金や両親からの贈与金などの特有財産を利用した場合、この点をどのように考慮するかは、「自宅マンション・持ち家の財産分与④住宅購入時の頭金(婚姻前の預貯金や親からの贈与金)はどうしたらよいか?」をご参照ください。
5.オーバーローンの場合
5-1.住宅以外に財産がない場合
売却代金では住宅ローン債務を支払いきれず(オーバーローン)、他に財産がない場合、分配すべき金銭はありません。
詳しくは、「借金、債務、ローン、負債は、財産分与されますか?」をご参照ください。
なお、残った住宅ローンを夫婦のいずれが支払うか、当事者間で協議することはできますが、債権者(住宅ローン会社・金融機関)との間で債務者を変更できるわけではありません。あくまで内部的な話し合いにとどまる点に注意が必要です。
5-2.住宅以外に財産がある場合
オーバーローンであっても、住宅以外に夫婦の財産がある場合、通常、他の財産と通算した上で残った財産があれば、財産分与割合に基づいて分配することになります。
6.具体的な財産分与の例
5,000万円で購入した自宅について、夫婦2分の1ずつの分与割合で、売却代金4,000万円(必要経費は控除済み)を財産分与するとします。また、自宅の名義及び住宅ローンの名義を夫とします。
6-1.住宅ローンがない・完済
住宅ローンがない・完済している場合、夫婦は各2,000万円を得ることになります。
6-2.住宅ローンがある
住宅ローンが2,000万円残っている場合、
4,000万円-2,000万円=2,000万円 の2分の1、つまり、各1,000万円を得ることになります。
6-3.オーバーローン・他に財産なし
住宅ローンが4,300万円残っている場合、4,000万円-4,300万円=-300万円となり、財産分与すべき代金は残りません。
6-4.オーバーローン・他に財産あり
住宅ローンが4,300万円残っているものの、夫名義の預貯金が400万円ある場合、まずは、住宅の売却代金を住宅ローンの弁済に充てます。
4,000万円-4,300万円=-300万円
次に、夫名義の預貯金400万円から、住宅ローン300万円を控除します。
400万円-300万円=100万円
残った100万円を2分の1、つまり、各50万円を得ることになります。