離婚調停は調停委員を介して話し合いによる解決を図る手続なので、お互いの間で合意が成立しないと「不成立」となって終了します。
婚姻費用や養育費の調停と違い、離婚調停の場合は不成立になったからといって自動的に裁判所による解決の手続きに進むことはありません。裁判所に離婚請求について判断してもらいたい場合は、離婚訴訟を提起する必要があります。
1.離婚調停の不成立とは
調停とは家庭裁判所で調停委員を介して当事者が話し合いによる解決を図る手続きです。合意が成立すれば「調停成立」となって終了します。
合意成立の見込みがない場合、調停委員会の判断で調停を「不成立」として終了させることができます(家事事件手続法272条)。この判断は、第1回目の期日でできることもあれば、何回かの期日を重ねてみないとわからないこともあります。判断できるのは調停委員会とされていますが、実際には当事者の意見も聞いて運用されています。統計によれば、離婚調停の約4分の1が不成立により終了しています。
不成立になる例としては、以下のようなものがあります。
- 当事者の一方が離婚に応じない
- 親権、慰謝料、養育費、財産分与などの争点について当事者間の主張の隔たりが大きく、お互いに譲らない
- 当事者の一方が出頭しない
2.離婚調停不成立のその後
不成立となると調停手続は終了します。当事者の法律関係には何の影響も及ぼしません。また、手続きが自動的に次の段階に進むこともありません。
この点、いわゆる別表第二事件(養育費、婚姻費用、財産分与、親権、遺産分割など)と異なることに注意が必要です。別表第二事件とは家事事件手続法別表第二に列挙される事件で、多くの家庭内の紛争がここに含まれます。別表第二事件の調停が不成立となった場合、自動的に審判手続きに移行します。
しかし、離婚は人事訴訟事件といい、審判ではなく訴訟(裁判)で取り扱わなければならないとされています。そして、調停から訴訟へは自動的に移行しません。改めて訴訟提起の手続きが必要となります。
なお、離婚調停で合意ができない場合であっても、当事者間で大きい争いがあるわけではなければ、直ちに調停不成立とはせずに裁判所が職権で離婚の審判をすることがあります。この場合は審判により離婚が成立することがあります。
3.離婚調停と裁判の違い
調停は調停委員を介して当事者が話し合いによる解決を図る手続きです。裁判所は手続きを主宰し、出席しない当事者に出席するよう働き掛けたり、双方の合意ができるよう調整に努めたり、合意が成立した場合には調停調書を作成するなど、解決を支援します。
訴訟は、当事者が離婚原因等を主張立証し、裁判所が事実を認定し、法律を適用して判決を下すことにより終局的に解決する手続きです。
離婚請求の可否の判断の際に適用される法律は、民法770条の裁判離婚に関する条文です。当事者が主張立証するのは、そこに規定される「離婚原因」に該当する事実の存否です。離婚原因の存在が認定された場合、原則として離婚請求が認容されます。
4.調停前置主義
家事事件手続法の規定により、人事訴訟事件については原則として訴訟提起より前に調停を申し立てなければならないとされています(同法257条)。家庭の問題については法律による一刀両断的な解決ではなく、まず話し合いによる解決を探るべきだという考えによるものとされています。
離婚調停が不成立になった後であれば、問題なく訴訟提起できます。このほか、調停取下げ等の場合も要件を満たすことがあります。
調停前置主義に違反していきなり訴訟を提起した場合、原則として職権で調停に付されます(同条2項。却下にはなりません)。
●離婚調停についてさらに詳しく知りたい方は、「離婚調停のよくあるご質問」をご覧ください。
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