自分の住所地の家庭裁判所で離婚調停を行うことについて相手方と合意がある場合、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に、離婚調停を申し立てることができます。
夫婦で管轄の合意がない場合、離婚調停を申し立てるのと同時に、その家庭裁判所に、自庁処理してもらうよう上申します。
なお、相手方が遠隔地にいる場合の対処法として、相手方の住所地の家庭裁判所に離婚調停を申し立てた上で、テレビ会議システムを利用して離婚調停を進めるなどの方法もあります。
1.離婚調停の管轄
離婚調停は、管轄のある家庭裁判所に提起する必要があります。
離婚調停の管轄は、①相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は②夫婦が合意して定めた家庭裁判所に属します(家事事件手続法245条1項)。
したがって、①自分と相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が同一、又は、②自分の住所地の家庭裁判所を管轄とする夫婦の合意がある場合、自分の住所地の家庭裁判所に、離婚調停を申し立てることができます。
質問のように夫婦が遠方で別居している場合、①は満たさないため、②夫婦の管轄合意があれば、申立人の住所地の家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
なお、②夫婦の管轄合意は、書面又はパソコンなどのデータ記録でする必要があります(同条2項、民事訴訟法11条2項、同条3項)。
また、愛知県内の家庭裁判所の管轄及び所在地、離婚調停の申し立てや問い合わせ窓口は、こちらをご覧下さい。
・離婚調停申し立ての必要書類・附属書類の一覧・チェックリスト
2.管轄合意がない場合の対処法
2-1.自庁処理を上申する
管轄のない家庭裁判所に離婚調停が申し立てられた場合、原則として、相手方の申立て又は家庭裁判所の権限・判断(職権といいます。)によって、管轄のある家庭裁判所に、事件が移されます(移送といいます。家事事件手続法9条1項本文)。申立先の家庭裁判所が、特に必要があると認めるときは、例外的に、申立先の家庭裁判所で離婚調停が行われます(自庁処理といいます。同項但し書)。
自庁処理を行うかどうかは、家庭裁判所に判断が委ねられています。当事者には自庁処理するよう求める権利や家庭裁判所の判断・決定に不服を述べる権利はありません。
そこで、管轄のない家庭裁判所に離婚調停を申し立てる際には、自庁処理を特に必要とする事情を記載した上申書を提出し、家庭裁判所に自庁処理してもらうようお願いします。
なお、自庁処理の裁判にあたっては、相手方から意見聴取がなされます(家事事件手続規則8条1項)。
2-2.テレビ会議システムの利用を上申する
自分の住所地の家庭裁判所に管轄の合意がなく、自庁処理も認められない場合、相手方の住所地の家庭裁判所に離婚調停を申し立てるほかありません。
この場合の対処法として、遠方にある相手方の住所地の家庭裁判所へ出席することなく、テレビ会議システムを利用して、離婚調停を進める方法もあります(家事事件手続法258条1項、同法54条)。
ただし、テレビ会議システムでは、離婚調停を成立させることはできません(家事事件手続法268条3項)。離婚調停を成立する際は、家庭裁判所へ出席する必要があります。