基礎知識 (離婚調停)
目次
1 離婚調停とは
離婚調停は、裁判所で行われる離婚の話し合いの手続きです。
裁判官や調停委員が間に入って、手続きや話し合いをすすめます。
夫婦双方が合意しない限り、離婚は成立しません。
裁判所では、夫婦関係調整調停(離婚)と呼ばれています。
参考条文
法律上は、家事事件手続法「第三編 家事調停に関する手続」に、離婚調停の手続きや調停離婚の成立、効力等が定められています。
2 離婚調停の大まかな流れ
離婚調停の大まかな流れは、次のとおりです。
- 離婚をしたい方が、管轄の家庭裁判所に離婚調停を申し立てる。
- 相手方に対し、家庭裁判所から離婚調停の通知・調停への呼出状が送られる。
- 家庭裁判所が指定した離婚調停の日時に、当事者が出席し、話し合いが行われる。
- 離婚調停が成立、不成立、取り下げ等によって終了するまで、③を繰り返す。
3 離婚調停と離婚理由・離婚原因、証拠
裁判離婚する場合、民法770条1項に定める離婚原因(不貞行為、悪意の遺棄、三年以上の生死不明、回復見込みのない強度の精神病、婚姻を継続し難い重大な事由)が必要です。
しかし、離婚調停は、話し合いの手続きであり、離婚理由・離婚原因は不要です。
同じ理由から、離婚理由・離婚原因に関する証拠(浮気の証拠としてメールやLINE、DVの証拠として診断書など)を提出する必要はありません。ただし、事案によって、離婚調停での話し合いを円滑に進めるなどのため、相手方や調停委員に証拠を提示したり、提出したりすることはあります。
4 調停前置主義
離婚したくても、協議で離婚が成立しない場合、離婚を求める当事者は、裁判手続きによって離婚を求めていくことになります。
もっとも、ただちに離婚裁判をすることはできません。
まず、家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。
このように、離婚裁判に先立って、調停を行わなければならない制度のことを、調停前置主義といいます。
5 離婚調停の流れ①-離婚調停を申し立てる
離婚調停は、離婚調停申立書を作成し、1200円分の収入印紙を貼り付け、必要な書類を添付して、管轄の家庭裁判所に、それらを提出して申し立てします。
また、申し立てに際しては、家庭裁判所に必要な分の郵便切手を納めてください。
離婚調停申立書が受理されると、その離婚調停について事件番号、担当の裁判官や調停委員が決められるほか、第1回目の調停を行う日程の調整が行われます。
6 離婚調停の流れ②-相手方への通知
第1回目の調停の日時が決まると、相手方に対して、呼出状(調停期日通知書)が送達されます。
呼出状には、申立人の氏名、第1回目の調停の日時、場所などが記載されています。
また、原則として、呼出状には離婚調停申立書のコピーが同封されています(同法256条1項)。
これらによって、離婚調停事件の相手方は、離婚調停が申し立てられたこと、申立人が離婚調停で求めている内容、第1回目の離婚調停の日時、場所等を知ることになります。
さらに、呼出状には、回答書(答弁書などと記載されている場合もあります)が同封されています。相手方から、第1回の調停期日までに、回答書の返送があると、裁判所が、事前に、当事者双方の主張を把握でき、円滑に調停を始めることができます。
7 離婚調停の流れ③-離婚調停に出席・話し合う
離婚調停の当事者は、それぞれ指定された日時に、指定された待合室に入室し、調停委員に呼ばれるまで、待機します。
第1回目の離婚調停では、申立人が先に呼ばれます。呼ばれたら、調停室に入室し、調停委員と話をします。一通り話しが終わったら、調停委員の指示にしたがい、待合室に戻ります。
次に、相手方が呼ばれ、同様に、調停委員と話をします。
調停は、このように当事者を入れ替えて行われるため、相手と顔を会わせる、また、相手も同席の上で話しをするということは、基本的にありません。
当事者入れ替えでの話し合いを繰り返し、1回の調停では結論が出ない場合、次の調停の日時を調整して、その日の調停は終了します。
以降、次のとおり、離婚調停が終わるまで、概ね1月に1回のペースで調停期日が開かれます。
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8 離婚調停の流れ④-離婚調停を終わらせる
離婚調停は、概ね次の3通りの方法で終わります。調停が成立して終わる場合、不成立で終わる場合と申立人が離婚調停を取り下げて終わる場合です。
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8-1 離婚調停が成立して終わる
当事者が、離婚に合意し、合意内容が調書に記載されて離婚調停が成立すると、離婚調停は終了します(同法268条1項)。
離婚調停が成立する場合、その合意内容を記載した調停調書が、裁判所書記官によって作成されます。
8-2 離婚調停が不成立で終わる
当事者の話し合いが決裂し、離婚調停が成立する見込みがない場合、調停は成立しない、不成立として終了します(同法272条1項)。
8-3 離婚調停を取り下げる
離婚調停の申し立ては、離婚調停が終了するまでは、取り下げることができます。
離婚調停が取り下げられると、その離婚調停は終了し、初めからなかったものとみなされます(同法273条1項)。
なお、離婚調停を取り下げた場合でも、離婚調停において話し合いがなされた上で、調停成立の見込みがないとして取り下げられた場合は、調停前置主義の要件を満たします。
他方、離婚調停では話し合いがされないまま、調停を取り下げた場合は調停前置主義の要件を満たしません。このような場合に、離婚調停終了後、離婚裁判を考えているならば、離婚調停を不成立で終了させる必要があります。
9 離婚調停終了後の流れ・手続き
9-1 離婚調停成立後の流れ・手続き
離婚調停が成立して終了した場合、離婚調停成立の日に、離婚したことになります。しかし、離婚届を役所に提出しなければ、それが戸籍に反映されません。
そこで、離婚調停成立後の手続きとして、離婚届を提出する必要があります。
離婚調停が成立する際、どちらが離婚届を提出するか、届出義務者についても話し合われます。一般的には、離婚調停の申立人が届出人となり、この場合、調停調書に「申立人と相手方は、本日、調停離婚する」などと記載されます。他方、相手方が未成年の子の親権者になる場合など、相手方が届出人となる場合もあります。そのような場合は、「申立人と相手方は、相手方の申し出により、本日、調停離婚する」などと、調停調書に記載されます。
また、離婚調停成立後の離婚届の提出は、10日以内に行う必要があります。
届出義務者となった方は、離婚調停成立の日から10日以内に、先ほど述べた調停調書の謄本を添付して、役所に離婚届を提出しましょう。
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9-2 離婚調停不成立後の流れ・手続き
9-2-1 離婚裁判を提起する
離婚調停が不成立で終了した場合、離婚は成立していません。離婚を希望する場合は、別途、離婚裁判を提起する必要があります。
離婚裁判は、管轄の家庭裁判所に、訴状を提出して提起します。この際、訴状に、離婚調停が不成立で終了したことが記載された調書(離婚調停不成立調書)の謄本を添付する必要があります。
なお、離婚調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に離婚裁判を提起すると、離婚調停を申し立てたときにさかのぼって、離婚裁判が提起されたものとみなされることから(同法272条3項)、離婚調停申立の際に納めた手数料を離婚裁判の申立手数料に充てることができます。
9-2-2 審判離婚
離婚調停が不成立で終了した場合、家庭裁判所が相当と認める場合に、調停の代わりに、離婚を認める審判をする場合があります。
審判離婚は、実務上は、あまり行われておらず、例えば、双方離婚に応じる意思があるにもかかわらず、財産分与のわずかな金額が折り合わないために、最終的な離婚調停が成立しなかった場合などで、行われることがあります。
ただし、この離婚の審判は、当事者が2週間以内に異議を申し立てれば、効力を失います(同法286条5項)。
10 まとめ
離婚調停は、当事者の合意成立を目指す、話し合いの手続きです。裁判所で行われる裁判手続きではありますが、離婚裁判ほど難しい手続きではありません。裁判所の職員や調停委員とうまくやりとりし、自分で離婚調停をすすめる方も多くいらっしゃいます。
しかし、裁判所の手続きを初めて利用される方には、不安やストレスを感じるかもしれません。
また、相手が、離婚調停に素直に応じないケースや財産や収入などの資料の開示に協力してくれないケースもあり、このような場合、専門家の助けなく離婚調停をすすめることは難しいかもしれません。
離婚調停では、弁護士を代理人に選任することができます。
当事務所の弁護士なら、離婚調停の申し立てはもちろん、離婚調停に同席し、裁判所や調停委員とのやりとり、相手とのやりとりも全て任せることができます。
1ヶ月に1回程度しか開かれない各離婚調停の間にも、相手方本人や相手方代理人弁護士との交渉や必要な手続きを行い、離婚調停の長期化を回避、早く終わらせるよう尽力します。
離婚調停が終わらない、進まない、出来るだけ早く終わらせたいなど、離婚調停でお悩みの方は、お気軽に当事務所弁護士に、離婚調停をご依頼ください。